安藤健二『封印作品の憂鬱』[洋泉社、二〇〇八]讀。早大文學部にゐ乍らも電網上に酒鬼薔薇聖斗の寫眞や本名を掲載して現行法に疑問を投ずる活動を爲してゐた過去からも判別る通り──加へて産經新聞の記者でもあつた譯で──作品を分析するのではなく封印されるに至つた社會的な問題や法律の障碍或は大人の亊情に關する部分を検証すると謂つた姿勢が一聯の著作を特徴づけてをり之も過去のものと大きく違はない内容になつてゐる。主題は飽くまで背景に絡んでゐる問題であり俎上に載せられた作品自體に對する思ひ入れが彊くないが故に作品の愛好家にしてみれば賛否ある處かと思はれるが何故封印されて終つたかゞ判別ることに因つて幻は幻の儘にして措かうと謂ふ氣になるものでかう謂つたものを記す人の存在は貴重であると思はれる。前二作が單行本に比較して後發の文庫でより詳細になつてゐるのと同ぢく之も聯載より單行本の方に厚みがある。